自動車運送業の中小企業における事業承継・M&Aと、これらの補助金について取り上げてみました。
経営者の高齢化が課題となっているトラック運送業界において、合併・親族内承継、親族外承継M&Aといった、多様な事業承継方法があるようです。
一方で、中小企業庁の「事業承継・M&A補助金交付規程」は、事業承継やM&Aに伴う設備投資や経営統合を促進するための補助金制度が用意されており、その交付目的、対象経費、申請手続き、不正防止策などが規定されています。
1. 事業承継の現状と重要性
後継者不足が深刻な課題
中小トラック運送事業者の約6割が「後継者が決まっていない」という現状、事業承継の必要性が高まっています。
早めの準備が不可欠
事業承継は「直ちに取組めるものではない」ため、「段階的なステップにより、早めに事業承継の準備を進めることが重要」とされています。
2. 事業承継の類型と方法
事業承継には主に以下の3つの類型があります。
(1) 親族内承継
現経営者の妻、子ども、兄弟姉妹などが後継者となるケース。
「所有と経営を一体的に承継しやすいため、早期取組により円滑な事業承継が可能」とされています。
親族間での「争族問題」に発展するリスクや、相続税の負担が大きくなる可能性があります。遺言書作成や生前贈与などによる事前の対策が重要。
(2) 親族外承継
共同創業者、役員、優秀な若手従業員などが後継者となるケース。
株式などの有償譲渡が多いため、取得資金の確保が重要になります。
(3) M&A(企業合併・買収)
親族や自社従業員以外の第三者による企業合併・買収。
トラック運送業は、事務所、車両、運転者等があれば、多様な運送形態に対応できる特徴があることから、M&A(企業合併・買収)に馴染みやすく、借入金の問題がなければ、容易にM&A(企業合併・買収)による事業承継が実現可能とされています。
3. 事業承継・M&Aの補助金制度(中小企業庁)
目的
中小企業・小規模事業者が事業承継やM&Aに際して行う設備投資、経営資源の引継ぎ、経営統合に係る経費の一部を補助し、経済の活性化を図ることを目的としています。
(1) 事業承継促進枠
設備費、原材料費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、外注費、委託費が対象。補助率2/3以内、補助上限額1,000万円以内。
(2) 専門家活用枠
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料が対象。
(3) 買い手支援類型
補助率2/3以内、補助上限額800万円以内(M&A成立の場合2,000万円)。
(4) 売り手支援類型
補助率2/3以内、補助上限額800万円以内。
一定条件(営業利益率低下、直近決算期の営業・経常利益が赤字の場合)で補助率が3/2に引き上げられます。
M&A支援機関の利用
専門家活用枠で仲介・FA業者への委託費が補助されるには、中小企業庁に登録した「M&A支援機関」の活用が条件となります。
対象となる委託費用
着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬、価値算定費用、デュー・ディリジェンス費用など。
M&Aの実現要件
補助事業期間内に、事業再編・事業統合を行う相手方とのM&Aを実施し、『基本合意書』または『最終契約書』が締結されることが必要」。
「本補助金における『M&A(経営資源引継ぎ)の実現』とは、補助事業期間内のクロージング(契約の履行)完了を指します。
クロージングが実現しなかった場合、補助上限額は300万円となります。
4. トラック運送事業における各種認可申請(運輸支局)
事業承継の形態に応じて、国土交通大臣の認可が必要な場合があります。
これらの認可申請は、登記とのタイミングに注意が必要ですので、自動車運送事業の許認可申請に詳しい行政書士にご相談ください。
(1) 合併認可申請
法人同士の合併の場合、「一般貨物自動車運送事業における事業の譲渡し、譲受け、合併、分割には国土交通大臣の認可を受ける」必要があります。
(必要書類)
合併契約書の写し、事業計画、財務状況、役員名簿・履歴書、事業用自動車の使用権原を証する書類などが含まれます。
(2) 相続による継続認可申請
個人事業主が死亡し、相続人が事業を継続する場合、「先代が亡くなってから60日以内に国土交通大臣の認可を受ける」必要があります。
(必要書類)
申請者と被相続人の続柄を証する書類、他の相続人の同意書、事業計画、資金計画、役員名簿・履歴書などが含まれます。
(3) 譲渡譲受認可申請
事業を他の法人や個人に譲渡・譲受する場合、「国土交通大臣の認可を受ける」必要があります。
(必要書類)
譲渡譲受契約書の写し、価格明細書、事業計画(譲受人・譲渡人双方)、資金計画、役員名簿・履歴書などが含まれます。
上記いずれの申請においても、営業所、車庫、休憩・睡眠施設の適法性、運行管理・整備管理体制、運転者の確保計画、事故防止・過積載防止に関する指導教育計画、苦情処理体制などが問われます。
5. 弊所のサービス内容
「あさぬま行政書士事務所」は、運送業の許認可申請を専門とする行政書士事務所です。
自動車運送業の新規営業許可申請から、営業所や車庫の移転、追加変更などの事業計画変更や、今回の記事にある、合併・譲渡譲受・相続の認可申請とあわせて、各種補助金申請を取り扱っております。
運輸支局への認可申請と、補助金事務局へのオンライン申請を丸ごとお受けすることも可能ですが、もし、これらの手続きを自社で行ってみたいという企業様向けのサービスとして、ご不明な申請書だけをサポートさせていただくことも可能です。
「どこから手をつけていいかわからない」
「申請書・参考様式の書き方がわからない」
「添付書類が何のことだかわからない」
「各種証明書をどこで入手するのかわからない」
「何となく作ってみたが、これで合っているのか自信がない」
「陸運支局への提出方法、提出先がわからない」
このような疑問・質問をお持ちのご担当者様に、申請書ごとに丁寧にお答えします。
わずかな経費で以降の外部委託費用が省けます。
お客様の利便の向上のために、このサービスをご利用いただき、スムーズな申請、コンプライアンス違反の無いホワイトな自社申請を実現していただければと思います。
最後に、事業承継は後継者不足という喫緊の課題に直面する中小企業にとって、早期かつ計画的な取り組みが不可欠です。
親族内承継、親族外承継、M&Aといった多様な選択肢の中から最適な方法を選び、適切な専門家の支援や補助金制度を最大限に活用することで、円滑な事業継続と発展を目指すことが重要となります。
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